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家を買うのは資産? 負債? 知っておくべきお金の話
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「家の購入は資産形成になる?」
住宅購入は人生最大の買い物ですが、正しく考えないと経済的な負担が大きくなります。そのため住宅ローンの組み方や資産価値が下がりにくい物件の選び方を理解することが重要です。本コラムでは、家を買う前に知っておきたいお金の話として住宅ローンの考え方や住宅購入のメリット・デメリットなどを詳しく解説します。
- コラムサマリ
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•住宅購入のメリット・デメリット
•住宅ローン契約時の注意点
•資産価値を維持しやすい住宅の選び方
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■家は資産? 負債?
住宅購入は、人生最大の買い物といわれていますが、「家は資産」という固定概念だけでは語りきれません。住宅ローンの返済負担や将来的な物件価値の変動を考えると、住宅は資産にも負債にもなり得ることを理解する必要があります。ここでは、住宅購入におけるメリットとデメリットを具体的に解説します。
住宅は、不動産として将来的に売却益を得る「資産」と捉えることもできますが、住宅ローンを利用する場合、返済期間中は「負債」としての側面も持ちます。購入直後は、物件の市場価格と同額の住宅ローン残高があるため、実質的な資産価値はほぼゼロです。しかし住宅ローンの返済が進むにつれて、借入残高との差額が実質的な資産となります。
また固定資産税評価額は、物件価値の参考となる指標の一つです。築年数が浅い物件ほど市場での評価が高く、将来的な売却も見据えた場合、築年数の経過が与える影響も考慮に入れる必要があります。
また、住宅ローンに関連するリスク管理として、団体信用生命保険(団信)は重要な役割を果たします。団信は、住宅ローン契約者が死亡または高度障害状態になった場合に、残りのローン残高が保険金で支払われる仕組みです。これにより、万が一の事態が発生した場合でも、家族に住宅ローンの負担を残すことなく、住み続けることができます。
これらの要素を総合的に判断し、無理のない住宅ローン計画を立て、慎重に物件を選ぶことが、将来の安定した資産形成に繋がります。
●住宅購入のメリット
・メリット①:資産形成
土地や建物は、将来的に売却や賃貸によって収益を得られる可能性があります。また、住宅ローンを返済していくことで、自分の資産(持ち家)が増えていくという安心感と、将来への備えになります。
・メリット②:住環境の安定
賃貸のように契約更新や家賃の値上げを心配する必要がなく、長期的に安定した住居を確保できます。
また、自分の好みやライフスタイルに合わせてリフォームやインテリアのDIYなどを自由に行えます。同じ場所に長く住むことで、地域住民とのコミュニティを形成しやすくなります。
・メリット③:税負担の軽減
住宅ローン控除により、一定期間、所得税や住民税の控除を受けることができ、税負担を軽減できます。
・メリット④:精神的な安定
マイホームを持つことで、経済的・精神的な安心感を得ることができます。また、団体信用生命保険(団信)によって、住宅ローン契約者が死亡または高度障害状態になった場合、残りのローン残高が保険金で支払われるため、家族に経済的な負担を残しません。
●住宅購入のデメリット
・デメリット①:経済的負担
住宅ローンを組む場合、長期間にわたって返済を続ける必要があります。毎月の返済額が家計を圧迫し、生活の質を落とさざるを得ないケースもあります。特に、金利上昇や収入減などのリスクが発生した場合、返済が困難になる可能性もあります。
持ち家には、固定資産税や修繕積立金、都市計画税など、さまざまな維持費がかかります。
これらの費用は、住宅ローン返済とは別に支払う必要があるため、事前にしっかりと把握しておくことが重要です。特に、築年数が経過した物件は、修繕費用が高額になる傾向があります。
・デメリット②:資産価値の変動リスク
不動産市場の動向によって、資産価値が大きく変動する可能性があります。立地条件や築年数、建物の状態など、物件個別の要因によっても資産価値が変動します。
・デメリット③:住み替えの制約
持ち家は、賃貸住宅に比べて住み替えが難しいというデメリットがあります。転勤や家族構成の変化などで住み替えが必要になった場合、家を売却する必要がありますが、すぐに買い手が見つからない可能性もあります。また、売却価格が購入価格を下回ってしまうリスクもあります。
・デメリット④:自然災害のリスク
地震や台風、大雨による水害、土砂災害など、自然災害によって建物が損壊したり、資産価値が大きく損なわれたりするリスクがあります。災害に備えて、保険への加入など、対策を講じる必要があります。購入を検討している地域の災害リスク(ハザードマップなどで確認)を事前に確認し、リスクの高い地域に家を建てる場合は、十分な注意が必要です。
■住宅ローンの「見えないリスク」と賢い借入のポイント
住宅ローンには、表面的な借入額だけでなく返済計画や金利の動向といった「見えないリスク」があります。ここでは、住宅ローンを組む際に留意すべきポイントと資産形成の視点からの注意点を解説します。
●住宅ローンを組む際に考慮すべきポイント
住宅ローンを選ぶ際には、金利タイプ、諸費用、返済方法など、さまざまな要素を考慮する必要があります。ここでは、それぞれについて詳しく解説し、自分に合った住宅ローン選びのポイントを紹介します。
・金利の違いを理解する
住宅ローンには、固定金利型と変動金利型があります。固定金利型は、返済期間中の金利が固定されているため、将来的な金利上昇リスクを回避できます。しかし、初期金利は変動金利型よりも高めに設定される傾向があります。変動金利型は、初期金利が低い点が魅力ですが、金利が上昇した場合に返済額が増加するリスクがあります。過去の金利推移を参考に、将来的な金利変動の可能性を検討しましょう。また、金利上昇に備えて、繰上返済を活用するなどの対策も検討しましょう。
・諸費用について確認する
住宅ローン契約時にかかる保証料や融資手数料などの諸費用は、金融機関によって大きく異なります。かかる費用によっては資金計画に大きく影響するため、事前に各金融機関の設定金額を把握したうえで、無理なく返済できるプランの策定が大切です。
・返済方法や期間の選択
返済方法や期間の選択も毎月の負担額や総返済額に大きく関わってくるため、自身の収入や将来設計に合わせたプランを選ぶよう心がけましょう。一般的に、無理なく返済を続けるための目安としては、住宅ローンの返済負担率(年収に対する返済額の割合)を25%以内に抑えるのが望ましいとされています。さらに、余裕を持った返済計画を立てるためには、返済負担率を20%以下に抑えることも検討すべきです。以下に年収別の月々の返済額の目安を示します。
年収
月々の返済額目安
400万円
約6.7万円~8.3万円
500万円
約8.3万円~10.4万円
600万円
約10万円~12.5万円
700万円
約11.7万円~14.6万円
800万円
約13.3万円~16.7万円
900万円
約15万円~18.8万円
1000万円
約16.7万円~20.8万円
●資産形成の観点から見たローンの注意点
住宅は、「資産」として捉えられる一方でローンの返済期間中は「負債」という側面も持ちます。資産形成としての住宅購入を成功させるためには、住宅ローン残高と物件価値のバランスをしっかりと見極めなければなりません。住宅ローンの返済が進むにつれて、借入残高が減り、物件の価値から借入残高を差し引いた純資産価値が増えていきます。そのため、先の返済負担率を参考に無理のない返済計画を立てることが重要です。また住宅ローン控除など税制優遇措置の活用も、資産形成のメリットを最大限に引き出すための鍵となります。加えて万が一のリスク管理として、各金融機関が取り扱っている団体信用生命保険の保障内容もしっかりと確認しましょう。場合によっては、自身の健康状態や家族構成に合った特約を付けることも重要です。
これらの点を踏まえたうえで長期的な視野で借入計画を策定し、将来的な資産価値の向上を目指すことが賢い住宅ローンの利用につながります。
■資産価値を維持しやすい住宅の選び方
住宅は、立地や物件の状態によって将来的な資産価値が大きく左右されます。ここでは、資産価値が下がりにくい物件の特徴と持ち家と賃貸のメリット・デメリットについて解説します。
●価値が下がりにくい物件の特徴
資産価値が安定する物件は、いくつかの要因がしっかりと整っていることが重要です。
・立地条件が良い
まず交通の便が良く、周辺の開発状況や人口の増加が見込まれる地域に位置していることが挙げられます。駅近や主要道路沿いの物件は、利便性が高く需要が安定するため、資産価値の下落を抑えることが期待できるでしょう。
・整形された土地
土地の形状も大きなポイントです。正方形や長方形など整形された土地は住宅設計の自由度が高く、使いやすさから買い手に人気があるため、価値が維持されやすくなります。
・敷地が平坦な土地
敷地が平坦で高低差がない土地は、造成工事や外構工事の手間・費用が少なく維持管理コストの低減にもつながります。
・災害リスクが低い地域
災害リスクが低い地域にある物件は、自然災害による価値下落のリスクが低く長期的な資産形成に有利です。
これらの条件がそろった不動産は、購入後も安心して資産として保有できるため、一つでも多くの条件が満たせるような物件選びが求められます。
●持ち家 vs. 賃貸、どちらが得なのか?
住宅購入は、自身の資産として将来的に売却や賃貸収入を得られる可能性があります。一方で、住宅ローン返済や固定資産税、修繕費などの維持コストがかかるため、資産形成としてはリスクもゼロではありません。・持ち家
持ち家の場合、住宅ローン完済後は毎月の返済がなくなるため、住まいがなくなる心配がない安心感があります。また自由に内装を変更できるなども魅力の一つです。しかし長期間にわたる維持管理費用やライフスタイルの変化に伴い住み替えが難しくなる点は、持ち家のデメリットです。
・賃貸
賃貸は、住宅ローンや固定資産税などの負担がなく、柔軟に住み替えができ急な転勤などにも対応しやすい点がメリットです。しかし毎月の家賃支払いが続くことから、「老後も毎月支出が発生する」「内装の自由度が低い」などの制約があります。
持ち家と賃貸のどちらが得かは、個々のライフプランや収入状況、将来の安定性をどれだけ重視するかにより異なるため、自身の経済状況や家族の将来設計を踏まえて慎重に判断することが大切です。
■まとめ
住宅は、適切なローン計画と賢い物件選びによって「資産」となる可能性があります。しかし誤った判断をすると「負債」となる恐れがあることも忘れてはいけません。そのため資産価値を維持しやすい物件選んだり、無理のない住宅ローン計画を立てたりして賢く資産形成を進めることが重要です。
将来の資産形成をしっかりと考え、無理のない借入計画と長期的な視野で家を選んで安心な住まいづくりにつなげましょう。
この記事の執筆協力
- 執筆者名
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藤森みすず
- 執筆者プロフィール
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食品衛生管理者、情報処理のアプリケーションエンジニア。21年ほどメーカー系SIerにてプログラマー、システムエンジニアを経験。退職後、Webライターとして様々な分野の執筆を行う。一時期、飲食業開業について学んだことがあり、起業関連の情報にも精通。FXなど投資関連も得意とする。
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